かつて「自民党の春夏秋冬」を決定づけ、人事と資金配分の絶対的なエンジンとして君臨した党内派閥。しかし、政治資金パーティーを巡る裏金事件に端を発した未曾有の政治不信を受け、2024年以降、永田町では歴史的な「派閥解散ドミノ」が吹き荒れました。あれから時を経て、政界再編の波が押し寄せる2026年現在、かつての派閥秩序はどう塗り替えられたのでしょうか。
「派閥は本当に消滅したのか」「今も残っているグループはどこなのか」「所属議員たちはどこへ向かったのか」——有権者が抱く数々の疑問に対し、最新の取材データと政治動向をもとに、現在の勢力図と各グループの実態を克明に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2026年現在、従来の政治団体として組織を維持しているのは麻生派(志公会)のみであり、党所属議員の8割以上が形式上「無派閥」となっている。
- 要点2:解散を決定した旧安倍派・旧岸田派・旧二階派・旧茂木派・旧森山派は事務所を閉鎖したが、勉強会や政策グループとして人的結束を保つ動きが水面下で続く。
- 要点3:派閥の拘束力が失われたことで、今後の自民党総裁選や党内人事では「世代間連帯」や「政策理念ごとの緩やかな合従連衡」がキャスティングボートを握る構図へ変貌した。
【2026最新勢力図】自民党の派閥一覧と現在残るグループの全容
自民党の歴史において、総裁選での票固めや閣僚ポストの配分、選挙資金の調達を担ってきた派閥組織は、今や根本的な構造転換を遂げました。かつて存在した主要6派閥のうち、政治団体としての存続を選択したのは麻生派(志公会)ただ1つです。
まずは、解散前の勢力と2026年現在の組織ステータスを一覧で整理します。
| 派閥名称(通称) | 解散前の規模 | 現在のステータス | 主な有力議員・動向 |
|---|---|---|---|
| 志公会(麻生派) | 約54名 | 存続(政策集団として活動) | 麻生太郎、鈴木俊一、河野太郎 ほか |
| 清和政策研究会(旧安倍派) | 約96名 | 解散・事務所閉鎖完了 | 萩生田光一、西村康稔、世耕弘成 ほか |
| 宏池会(旧岸田派) | 約46名 | 解散・政治団体解散届提出済 | 岸田文雄、林芳正、木原誠二 ほか |
| 志帥会(旧二階派) | 約38名 | 解散・残余財産処理 | 二階俊博(引退・世代交代)、武田良太 ほか |
| 平成研究会(旧茂木派) | 約44名 | 政治団体解散(研修会等へ移行) | 茂木敏充、加藤勝信 ほか |
| 近未来政治研究会(旧森山派) | 約8名 | 解散・解散届提出済 | 森山裕 ほか |
一覧から明らかなように、数字の上では所属議員の大部分が「無派閥議員」へと籍を移しました。しかし、長年培われた人的ネットワークや師弟関係が一朝一夕に霧散したわけではありません。各グループは現在、派閥の看板を下ろしながらも「政策勉強会」や「情報交換会」と名を変え、新たな形で永田町内に根を張っています。
なぜ派閥は解散したのか?裏金問題の真相と解散ドミノの舞台裏
自民党史に刻まれる「派閥解体劇」の引き金を引いたのは、2023年終盤に表面化した政治資金パーティー券収入の裏金化問題でした。各派閥が設定したパーティー券の販売ノルマを超えた分を、派閥側の収支報告書に収入として記載せず、所属議員側にも中抜きやキックバックとして還流させて裏金化していた組織的慣習が白日の下にさらされたのです。
中でも最大派閥であった清和政策研究会(安倍派)では、総額数億円規模に上る不記載が発覚。東京地検特捜部による強制捜査が入り、幹部議員への処分や離党勧告、公民権停止にまで発展する戦後屈指の政治スキャンダルとなりました。
国民の激しい怒りに直面した当時の岸田文雄首相は、政権浮揚の奇手として自身の派閥である宏池会の解散を電撃的に宣言。これに追随せざるを得なくなった安倍派、二階派が相次いで解散を決定し、政界に「解散ドミノ」が巻き起こりました。政治改革大綱の策定とともに、派閥による「事務所の維持」「政治資金集めの禁止」「人事介入の排除」が党内ルールとして明文化され、従来の派閥システムは法制・倫理の両面から封じ込められたのです。
唯一存続する「麻生派(志公会)」の現在地と所属議員の内訳
他派閥が雪崩を打って解散に追い込まれる中、頑として組織の維持を貫いたのが麻生太郎最高顧問率いる志公会(麻生派)です。
麻生氏は当時から「政策集団として切磋琢磨すること自体が悪ではない」と公言。違法なキックバックを行っていなかったことを盾に、組織の看板を下ろすことを拒否しました。2026年現在も約50名の所属議員を抱え、党内で唯一「まとまった議席数を背景に発言力を行使できる勢力」として異彩を放っています。
麻生派の主な顔ぶれには、以下の有力議員が名を連ねています。
- 麻生太郎:グループの最高権威。キングメーカーとしての影響力を保持。
- 鈴木俊一:党・内閣の要職を歴任する実力派。財政政策のキーマン。
- 河野太郎:独自の発信力を持つ総裁候補の一角。
- 甘利明:経済安全保障政策を主導する政策通。
- 井上貴博:派閥の実務や中堅・若手の取りまとめを担当。
他グループが「無派閥」の看板を掲げて動きを制限される中、定例会合を開き、選挙互助会としての結束力を保つ麻生派は、党内のパワーバランスにおいて極めて強力な存在感を維持し続けています。
解散した旧5派閥(安倍派・岸田派・二階派・茂木派・森山派)の現在
解散届を提出し、表舞台から姿を消した旧派閥のメンバーたちは、現在どのような状況に置かれているのでしょうか。各勢力のリアルな動向を追います。
【旧安倍派(清和政策研究会)の現在地】
かつて100名近くを誇った党内最大勢力は、裏金問題の直撃を受けて完全に四分五裂しました。幹部陣(いわゆる5人衆など)の多くが役職停止や離党などの厳しい処分を受け、求心力を喪失。現在は「親安倍・保守理念派」と「選挙基盤の弱い若手・中堅」に分断され、かつての結束力は見る影もありません。個々の議員は地元後援会の再建に追われ、党内での発言力は著しく低下しています。
【旧岸田派(宏池会)の現在地】
いち早く解散を決断した旧岸田派は、派閥事務所を閉鎖したものの、岸田前首相や林芳正官房長官、木原誠二氏らを中心とする人的なパイプは強固なままです。「伝統的なリベラル・政策通集団」としてのカラーを維持しつつ、他派閥の解散組と緩やかな政策勉強会を立ち上げるなど、脱派閥時代の新たな軸として機敏に立ち回っています。
【旧茂木派(平成研究会)の現在地】
「政策集団への移行」を掲げた茂木敏充氏の采配に対し、所属議員の一部が離脱するなど軋みが生じた旧茂木派。現在は形式的な政治団体を解消しつつも、加藤勝信氏らとともに旧経世会の政策・予算獲得ノウハウを引き継ぐネットワークを細々と維持しています。
【旧二階派(志帥会)と旧森山派】
重鎮・二階俊博氏の政界引退と世代交代に伴い、二階派は完全に組織的拠点を失いました。一方、国会対策などで圧倒的な調整力を持つ森山裕氏の周辺には、派閥の枠組みを超えた議員たちが自然と集まり、実務派の重鎮としての存在感を放っています。
「無派閥」が8割超の異例事態|水面下で蠢く新グループと総裁選への影響
形式上、議員の8割以上が無派閥化したことで、自民党内の政治力学は根底から覆りました。従来の派閥政治では「領袖(派閥トップ)の意向ひとつ」で何十票もの党内票が右から左へと動きましたが、その統制メカニズムが機能不全に陥ったためです。
これにより、自民党総裁選の構図は決定的に変化しました。
かつては「所属派閥の推薦人枠」を確保することが出馬の第一関門でしたが、現在は個々の議員が独自の理念や損得勘定で動く時代へとシフトしています。派閥からの資金援助や選挙応援という「首輪」が外れた結果、若手や中堅議員は派閥ボスの指示に従う義理を失い、自らの選挙に有利に働く「国民人気の高いリーダー」を自発的に選別する傾向が顕著になっています。
その結果、永田町で台頭しているのが「テーマ別・世代別の勉強会」です。財政再建、安全保障、デジタル改革など、特定の政策課題を掲げて超派閥的に集う勉強会が乱立。これらが事実上の「新派閥予備軍」として機能し始めており、総裁選を前にした新たな多数派工作の温床となっています。
2026年最新政界動向|派閥解消は本物か?形骸化する「脱派閥」の現実
政治資金規正法の改正や党改革により、派閥主導のパーティー開催や人事の推薦名簿提出は完全に禁止されました。しかし、2026年現在の政界の実情を観察すると、「派閥の完全消滅」と結論づけるのは早計と言わざるを得ません。
政治家が集団を作る本質的な理由は「数こそ力」という議会制民主主義の冷徹な現実にあります。ポストの獲得、重要法案を通すための国会対策、次期選挙での生き残りを図る上で、孤立無援の単独行動には限界があるからです。
実際、永田町周辺の料亭やホテルでは、旧派閥の領袖や中堅幹部が「情報交換」と銘打って数十名単位で集会を重ねる光景が常態化しています。事務所が存在せず、政治資金の出入りが透明化されたとしても、「誰が誰の面倒を見ているか」という人間関係のヒエラルキーは根強く残存しています。表面的な「派閥解消」の看板の裏で、より巧妙で不可視なパーソナルネットワークへと姿を変えたにすぎないという指摘は、党内からも漏れ聞こえてきます。
【自民党 派閥 一覧】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、自民党内で正式に存続している派閥は本当に麻生派だけですか?
A1:はい。政治資金規正法上の政治団体として、かつ旧来の派閥組織としての活動を公に継続しているのは志公会(麻生派)のみです。他の安倍派、岸田派、二階派、森山派は解散届を提出して組織を閉鎖し、茂木派も政治団体としての派閥を解消しました。
Q2:派閥を解散した議員たちは、政治資金をどうやって集めているのですか?
A2:従来の派閥パーティー券の割り当てや派閥からの「氷代・餅代」といった活動資金の配布は行われなくなりました。各議員は自らの個人後援会や資金管理団体を通じ、少人数制の個人セミナー開催や個人献金、政党交付金の配分によって個別に資金を調達しています。
Q3:派閥がなくなったことで、内閣改造や党役員人事の決め方はどう変わりましたか?
A3:以前のような「派閥ごとの推薦枠(当選回数に応じた順番待ち人事)」は建前上撤廃されました。首相や党執行部が政策専門性や世論の支持率、当選回数を考慮して一本釣りするケースが増加しています。ただし、政権運営の安定化を図るため、旧派閥のバランスに配慮した「見えない配分」が完全に消えたわけではありません。
まとめ:変容する派閥の力学とこれからの日本政治
自民党の派閥は、裏金問題を機に過去最大の解体局面を迎えました。表向きは麻生派を除く全派閥が解散し、党所属議員の8割が無派閥という前代未聞の状況が出現しています。派閥の拘束力が弱まったことで、総裁選における多様な政策論争や、若手議員の自由な意思表示が可能になった点は確かな前進と言えます。
しかし、政党政治の本質が「数の結集」にある以上、形を変えた政策グループや水面下の勉強会が新たな権力闘争の舞台となるのは必然の力学です。看板を掛け替えただけの擬似派閥へと先祖返りするのか、それとも理念と政策で結ばれる真の近代政党へと脱皮できるのか。2026年以降の自民党の歩みは、日本の政治構造そのものの試金石となっています。 (出典: 自民党 派閥 一覧(Yahoo!ニュース))